夕焼けやウイルスを美しく飼い 岡村知昭
例えば「文鳥」でも「蘭鋳」でもいいのですが、ほんとうに美しくて飼えるものでも成立する句型を整えておいて、あえてそうでないものをそこに置くことによって出現する意外性、倒錯こそが、岡村知昭ワールドなのでしょう。奇しくも発句は「ウイルス」。罪悪感のない天才少年たちのように、作者はその愉快にうちふるえていることでしょう。
おとうとを白旗にして夏野ゆく 岡村知昭
例えば「おとうとを先頭にして」だったら、まったく当たり前でノスタルジックなスナップなわけですが、この人は「おとうとを白旗にして」と書かざるを得ないのです。おそらく、ただ「その方が面白いから」。いったい何に降伏したというのか、生きながらに白旗として宙づりにされたおとうとのように、すべての意味が宙づりにされています。
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