2022年7月9日土曜日

掲示板過去ログ181

 2019年 9月 4日(水)10時28分23秒から2019年10月17日(木)13時02分58秒まで。




韃靼の巻 6  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月17日(木)13時02分58秒

   天気さん、ありがとうございます。前句の「それつぽく」を踏まえると、これは映画撮影現場か…。


   長き夜の韃靼人の踊りかな     りゑ

    後の月にはのちのしづかさ    三島

   とりどりに拾ふ橡の実などありて  詠犬

    私語の聞こえる教壇にたつ    ハク

   それつぽく髪を乱して白手套    西生

    風力計も折れんばかりに     天気


 初折裏に入ります。私たちはネットで巻いている訳ですが、もともと三十六歌仙の連句は2枚の懐紙を二つ折りにして、表と裏に書きました。一枚目の表を初折表(しょおりおもて)、裏を初折裏(しょおりうら)、二枚目の表を名残表(なごりおもて)、裏を名残裏(なごりうら)と言います。その物理的な制約が内容に及んでいて、最初と最後の面はまじめにやります。途中の初折裏と名残表は酒が振る舞われ諧謔の限りを尽くす「あばれどころ」と言います。ただし面が変わってもリセットされるわけではなく、前の面の最後の句に付けるのは同じです。


 というわけで堺谷真人さん、「風力計も折れんばかりに」に付けて下さい。大いに悪ふざけ可です。雑か夏でお願いします。  

 

 

韃靼の巻 3  投稿者:天気  投稿日:2019年10月17日(木)11時58分55秒

  こんにちは。


    風力計も折れんばかりに     天気


お捌きください。  

自然薯の巻 5  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月17日(木)11時35分9秒

   トキさん、ありがとうございます。ポラロイドカメラって使ったことがないのですが、前句に「擬声語辞典」があるせいで、どんな操作音がするのか想像がふくらみますね。たまたま打越に「切る」があった訳ですが、ここは「だす」が圧倒的によいです。果たして「彼」は被写体なのか撮影者なのか…。


   自然薯の自我肥大たる湿度かな    なむ

    生きて腸まで届く山かけ     ゆかり

   満月を横切る貨車は音たてて    れいこ

    ページの焼けた擬声語辞典      槇

   ポラロイドカメラが彼をひらきだす  トキ


 では高橋洋子さん、雑か夏か冬でお願いします。

 

(無題)  投稿者:トキ  投稿日:2019年10月17日(木)11時20分27秒

  あっ、スミマセン打越に「切る」がありました!

以下でお願いします


ポラロイドカメラが彼をひらきだす  

(無題)  投稿者:トキ  投稿日:2019年10月17日(木)11時15分6秒

  鴇田智哉です。よろしくお願いいたします。

名前「トキ」でいいですか。


ポラロイドカメラが彼をひらききる  

自然薯の巻 4  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月17日(木)09時40分0秒

   槇さん、ありがとうございます。よく分かっていなかったので『現代国語例解辞典』(第四版)を引きました。


●擬音語

(意味)物の音や声をまねて表わす言葉。

(語例)うんうん・キャーッ・ごとごと・ポキリ・ヒューヒュー

●擬声語

(意味)擬音語のうち、特に人や動物の声についていう。

(語例)あはは・コケコッコー・チンチロリン・にゃーん・ワンワン

●擬態語

(意味)実際に音を出していない状態を感覚的に表わす言葉。

(語例)うんざり・がくっ・すべすべ・てきぱき・どろーっ・にやにや


 一方で、擬声語について「擬音語に同じ、または擬音語のうち人や動物の声を表したもの」とするものもあるようです(広辞苑など)。


 悩ましいのですが、仮に「擬音語」とすると前句に「音たてて」があるではないかということになるので、広辞苑の「擬音語に同じ」の部分を採用してそのまま行きます。


   自然薯の自我肥大たる湿度かな   なむ

    生きて腸まで届く山かけ    ゆかり

   満月を横切る貨車は音たてて   れいこ

    ページの焼けた擬声語辞典     槇


 では鴇田智哉さん、雑か夏か冬でお願いします。鴇田智哉さんのあとは高橋洋子さん、田中槐さんと続き七吟で巻きます。

 

自然薯  投稿者:槇  投稿日:2019年10月17日(木)04時37分22秒

  ドキドキと馳せ参じました。どうぞよろしくお願いいたします。


ページの焼けた擬声語辞典


お捌きください。  

自然薯の巻 第三  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)22時25分58秒

   れいこさん、ありがとうございます。「たちまちの月」と限定すると、旧暦八月十七日スペシャルになって同季のなかで時間が戻ってしまうようですね。動きのある二句目を頂きます。おなかこわしたのかなあ。


   自然薯の自我肥大たる湿度かな   なむ

    生きて腸まで届く山かけ    ゆかり

   満月を横切る貨車は音たてて   れいこ


 槇さん、雑でお願いします。

 

自然薯の巻3 月  投稿者:れいこ  投稿日:2019年10月16日(水)22時01分54秒

  連衆のみなさま、こんばんは。よろしくお願いします。

ゆかりさん、今回もお世話になります。



自然薯の自我肥大たる湿度かな   なむ

    生きて腸まで届く山かけ    ゆかり



たちまちの月はあくびのやうに出て

満月を横切る貨車は音たてて

階段に月のひかりを敷き詰めて  

韃靼の巻 5  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)20時32分22秒 編集済

   西生ゆかりさん、ありがとうございます。前句で「教壇」と場所を明示しているので、それに合いそうなという観点で一句目を頂きます。遅刻かな。


   長き夜の韃靼人の踊りかな     りゑ

    後の月にはのちのしづかさ    三島

   とりどりに拾ふ橡の実などありて  詠犬

    私語の聞こえる教壇にたつ    ハク

   それつぽく髪を乱して白手套    西生


 では天気さん、雑か冬でお願いします。



 

自然薯の巻 脇  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)20時13分59秒

   なむさん、挨拶句を恐れ入ります。最初の自然薯の句のほうが生命感があるので、そちらを頂くことにします。


   自然薯の自我肥大たる湿度かな   なむ

    生きて腸まで届く山かけ    ゆかり


 「山かけ」が季語なのか疑わしくもあるのですが、ここでは季語として使用します。


 なかはられいこさん、第三をお願いします。発句が秋なので、本来五句目の月の座を第三まで引き上げます。「て止め」でまとめて下さい。  

ハクさんの次  投稿者:西生  投稿日:2019年10月16日(水)17時58分7秒

  こんにちは、西生(さいしょう)ゆかりです。三島さんの別人格ではありません。どうぞよろしくお願いします。


それつぽく髪を乱して白手套

ディズニーの缶に輪ゴムとサングラス

菱形の窓の向かうの金魚売  

挨拶にて候。  投稿者:なむ。  投稿日:2019年10月16日(水)15時24分33秒

  レガートの霧の駒場となりにけり   なむ  

おっ  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)13時08分17秒

  その一というと、その二、その三が続々候補で出てくるのでしょうか。ではすぐに脇を付けないで、ちょっとお待ちしますね。打つべし、打つべし、打つべし!  

発句その一。  投稿者:なむ。  投稿日:2019年10月16日(水)13時05分31秒

  自然薯の自我肥大たる湿度かな   なむ


自分でも、丈高い句とは思えませんが、こんなん出来てしまいました。

如何でしょう。お捌きのほど。  

韃靼の巻 4  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)12時13分43秒

   ハクさん、ありがとうございます。よろしくお願いします。二句目を頂きます。


   長き夜の韃靼人の踊りかな     りゑ

    後の月にはのちのしづかさ    三島

   とりどりに拾ふ橡の実などありて  詠犬

    私語の聞こえる教壇にたつ    ハク


 では西生ゆかりさん、本来月の座の位置ですが、月は脇に引き上げてしまいましたので、雑か夏か冬でお願いします。


 あとダブルゆかり状態なので、表記は「西生」「三島」で行きます。

 

よろしくお願いします  投稿者:ハク  投稿日:2019年10月16日(水)11時55分43秒

  浅沼璞です。こちらではハクの表記でお願いします。取り急ぎ三句、お捌き下さい。


研究成果パソコンにうつ

私語の聞こえる教壇にたつ

味うすきものばかり気になる

 

なむさん、なむさん  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)09時54分42秒

  南無三。もう一巻き、行きます。発句をお願いします。  

というところで  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)09時46分21秒

  なむさんから名乗りが…。

今、7名すでに決まっていて、どうしたものか。佐藤りえさん、三島ゆかり、中島憲武さん、浅沼璞さん、西生ゆかりさん、西原天気さん、堺谷真人さん、なんだけど、九吟に拡張するかもう一巻き、行っちゃうか…。しばし考えますので、お待ち下さい。  

韃靼の巻 第三  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月16日(水)09時40分54秒

   詠犬さん、ありがとうございます。なんだか面白いことになっています。発句がど~んと韃靼人という想像をふくらませるもので来て、それに脇を付けた局面なので、第三はむしろちまちましたものを持ってきた方が展開になるのですね。認識をあらたにしました。一句目を頂きます。脇の「のち」のリフレインに「とち」で付け、「と」「ど」「と」「ど」「て」というリズムが面白いです。


   長き夜の韃靼人の踊りかな     りゑ

    後の月にはのちのしづかさ   ゆかり

   とりどりに拾ふ橡の実などありて  詠犬


 では浅沼璞さん、雑の句をお願いします。

 

詠犬さんのあと、  投稿者:なむ。  投稿日:2019年10月16日(水)09時38分49秒

  混ぜていただきたく、何卒御願申上候。

 

おはようございます。  投稿者:詠犬  投稿日:2019年10月16日(水)09時06分40秒

  三句め。三句作ってみましたので、こちらからどれか取って頂きたく。ダメでしたら、またチャレンジします。(^_^;)


とりどりに拾ふ橡の実などありて

末枯るる街道をゆく犬ありて

見渡せば干柿のある軒ありて  

ううむ  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月15日(火)09時55分32秒 編集済

   詠犬さん、おはようございます。「詠犬」をATOKに覚え込ませました。

さて御句ですが、同季の中では時間順というのがありまして、桃だと初秋に戻ってしまいます。かといって、単純に柿に替える訳にも行きません(^^);

あと、「海峡」だと発句から安西冬衛に引きずられていて、あいだに一句置くと「打越にかかる」というものになってしまいます。


晩秋っぽいもので、もう何句か案を頂けないでしょうか。  

おはようございます  投稿者:詠犬  投稿日:2019年10月15日(火)08時11分34秒

  中嶋憲武です。ご指名により第三句付けさせて頂きます。こちらでは、詠犬という名前でよろしくお願いします。


海峡を無数の桃の漂ひて  

韃靼の巻 脇  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年10月15日(火)00時39分29秒

   りゑさん、ありがとうございます。「韃靼人の踊り」、ちゃんと聴いた記憶がなかったのですが、「シェエラザード」とカップリングされたCDがあったので聴きました。比類なく美しい曲ですね。アップテンポになると、どこかプログレっぽくもあります。


   長き夜の韃靼人の踊りかな   りゑ

    後の月にはのちのしづかさ ゆかり


 秋なので月の座を繰り上げる訳なのですが、発句が「長き夜」で第三に月というのも苦しいので、脇まで上げてしまいました。


 第三ですが中嶋憲武さん、秋の句を続けて「て止め」で展開して下さい。「秋」の字そのものは全体を通じなるべく使わないようお願いします。


 

こんばんは  投稿者:りゑ  投稿日:2019年10月13日(日)20時11分8秒

  初めましての方も、お久しぶりのかたも、こんばんは。佐藤りえです。

ご指名により発句です。

よろしくお願いします。


長き夜の韃靼人の踊りかな  りゑ

 

速いですね。  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月27日(金)16時58分13秒

  昨日の未明に投函してもう届いてるんだから、驚異的な速さですよね。まこと俳諧は人でなしで嗚呼恍惚のです。お楽しみ下さいませ。  

みしみし第三号届きました  投稿者:銀河  投稿日:2019年 9月27日(金)15時01分2秒

  まずは、増税前の仕上がり、おめでとうございます。最近作。「かなかなや」を読み直しています。連句はもともと不自由な芸術で、ハイカイは人でなしのおふざけ、よく危険対象などにならなかったものです。  

あんこさん、どうも  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月12日(木)09時27分49秒

  そうなんです、川上巨人のV9戦士みたいな不動のラインアップもそれはそれで魅力ですが、変動するメンバーで何が起こるか分からない刺激というのも大切だと思うのです。とはいえ、ここ最近の巻にしては、陽子さん以外は懐かしいメンバーで固め、リユニオン・セッションみたいな趣もありました。初参加の陽子さんを含め、皆さん、味を出しています。  

月犬さん、どうも  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月12日(木)09時18分53秒

   完璧かどうかはともかく、整えられるところは整えます。


 ついでに「日傘さしの巻」の初折表六句目の「薄原より魔女の飛び立ち 恵」も「薄原より魔女の飛び立つ」とします。  

遅ればせながら  投稿者:あんこ  投稿日:2019年 9月12日(木)06時53分35秒

  満尾、おめでとうございます!

毎回メンバーが違うので、全く初めての気分で

楽しいです。

今回ちょっと同時に色々重なり、できるかな(^_^;)と

途中弱気になりましたが、ゆかりさんの導きと

皆さんの作品にインスパイアされてやれました!


ありがとうございました(^o^)  

めでたし  投稿者:月犬  投稿日:2019年 9月11日(水)23時03分9秒

  完璧(^.^)  

ありがとうございます  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月11日(水)18時13分33秒

   では、こんな感じで。


     七吟歌仙 かなかなの巻


   かなかなや他人の住んでゐる生家    陽子

    釣瓶落しへ豆腐屋の笛       ゆかり

   月光を物理学者のすり抜けて     あんこ

    狂ひ咲きをる病院の庭        媚庵

   洟水に似たる氷柱をへし折らん     銀河

    夜毎天狗は高尾の森で        月犬

ウ  語部の塩辛声のしみわたる        令

    南の島の白き砂浜           子

   たつぷりと塗つてと言ひて横たはり    り

    背骨をなぞるこそばゆき指       こ

   三味線の皮は猫だと教へられ       庵

    蝙蝠の影よぎる月面          河

   書棚には伯爵領といふ句集        犬

    前へ倣へで靴の形に          令

   下萌を駆けてくる半ズボンたち      子

    げにかぐはしき佐保姫のひだ      り

   風光るテラスヘスパゲティふたつ     こ

    文庫の中也詩集に落花         庵

ナオ 早紅葉の湯田温泉の駅舎裏        河

    旅の役者と帰る燕と          犬

   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

    押入のなか息をひそめる        子

   熱戦はタイブレークに突入す       り

    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

   賭け金をまた倍にする女連れ       庵

    燃える朱色に香を焚きしめ       河

   老画伯襖に描く龍虎の図         犬

    竹林ふかく小径小暗し         令

   月光に関守石のひとつあり        子

    抜き差しならぬままに長き夜      り

ナウ 露霜の鉄扉を押せば軋みたる       こ

    グランドピアノ弾く人の影       庵

   抽斗にハズキルーペを置き忘れ      河

    嗚呼恍惚の牡丹雪降る         犬

   雨傘をレフ板として花万朶        令

    整列の前よぎるてふてふ        子


起首:2019年 8月13日(火)

満尾:2019年 9月 5日(木)

捌き:ゆかり  

はい  投稿者:令  投稿日:2019年 9月11日(水)17時29分4秒

  ゆかり様

竹林ふかく小径小暗し、かまいません。  

令さん、令さん  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月11日(水)14時21分27秒

   ナオ4句目の表記を整えて「押入のなか息をひそめる」としたいのですが、そのままでは10句目の「竹林のなか小径小暗し」に障ります。10句目を「竹林ふかく小径小暗し」としたいのですが、ご意見を下さい。  

七吟歌仙 かなかなの巻 評釈(4)  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月11日(水)13時54分59秒

      抜き差しならぬままに長き夜      り

ナウ 露霜の鉄扉を押せば軋みたる       こ

 「露霜」は露が寒さで凍って半ば霜となりうっすらと白くなっているもの。抜き差しならなかったのは鉄扉のかんぬきだったようである。


   露霜の鉄扉を押せば軋みたる       こ

    グランドピアノ弾く人の影       庵

 晩秋の寒さに対し、暖かい部屋でグランドピアノを弾く人のイメージを重ねている。うすぼんやりと影のみが見える。秋を離れている。


    グランドピアノ弾く人の影       庵

   抽斗にハズキルーペを置き忘れ      河

 うすぼんやりとしか見えなかったのは、老眼鏡を置き忘れていたからなのだった。


   抽斗にハズキルーペを置き忘れ      河

    嗚呼恍惚の牡丹雪降る         犬

 ここまで雪が出ていないので、春の句として牡丹雪を降らせている。老境を『恍惚の人』とした有吉佐和子の小説が懐かしい。


    嗚呼恍惚の牡丹雪降る         犬

   雨傘をレフ板として花万朶        令

 花の座である。レフ板は写真家が用いる小道具で、影が強すぎるのを補ったり、ポートレートの瞳に光を入れたりするための、白や銀色の反射板。通りすがりの花が下がった景を撮るために、持ち合わせた雨傘をレフ板に代用する。折しも牡丹雪は上がっている。


   雨傘をレフ板として花万朶        令

    整列の前よぎるてふてふ        子

 集合写真を撮るために整列したその前を蝶が横切る。ちょっとした間に、一同自然と笑みがこぼれる。ユーモラスな挙句となった。  

七吟歌仙 かなかなの巻 評釈(3)  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月11日(水)13時26分4秒

      文庫の中也詩集に落花         庵

ナオ 早紅葉の湯田温泉の駅舎裏        河

 春を離れ、雑を置かずに秋としている。「落花」と「早紅葉」とでイメージを重ねつつ、ひなびた温泉街に推移している。


   早紅葉の湯田温泉の駅舎裏        河

    旅の役者と帰る燕と          犬

 「駅舎裏」に「旅の役者」はよく似合う。そして「帰る燕」もまた長い旅に出るのだ。


    旅の役者と帰る燕と          犬

   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

 「菊酒」は重陽の節句の祝いで、酒に菊の花を浮かべたもの。それをどうしたのかについては触れていないので、補って想像するしかないのだが、風呂敷にこぼしてしまったのか。「旅の役者」に「唐草文の風呂敷」はよく似合う。


   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

    押入の中息をひそめる         子

 「唐草文の風呂敷」と言えば空き巣だろう。酒を失敬しようとしたところに、家の者が帰宅し押入に身を隠した。秋を離れている。


    押入の中息をひそめる         子

   熱戦はタイブレークに突入す       り

 家の者が観始めたテレビのテニス中継は息詰まる熱戦で、そのまま出るに出られない。


   熱戦はタイブレークに突入す       り

    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

 ふと気づけば、待機するボールボーイは選手の集中を妨げないためかいつも後ろ手の姿勢をとっている。前句にベタで付けてはいるが、ちゃんと打越からは離れている。


    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

   賭け金をまた倍にする女連れ       庵

 思いっきり転じている。試合の行方を見守るスポーツ賭博の現場なのか、「ボールボーイ」が賭場のホール係の慇懃な態度を想起させたのか。


   賭け金をまた倍にする女連れ       庵

    燃える朱色に香を焚きしめ       河

 前句の連れの女を描いたものか。どこか任侠映画のようである。


    燃える朱色に香を焚きしめ       河

   老画伯襖に描く龍虎の図         犬

 「燃える朱色」を「龍虎の図」に見立て替えしている。


   老画伯襖に描く龍虎の図         犬

    竹林のなか小径小暗し         令

 前句全体の雰囲気から漢詩の世界のようなところに導かれている。


    竹林のなか小径小暗し         令

   月光に関守石のひとつあり        子

 月の座である。「関守石」は蕨縄(わらびなわ)または棕櫚縄(しゅろなわ)で十文字に結わえて据えた石で、通り抜けを禁ずる意を示すもの。いかにも竹林の小径の行く先を封じていそうである。ここから秋の句が続く。


   月光に関守石のひとつあり        子

    抜き差しならぬままに長き夜      り

 「関守石」を受けて「抜き差しならぬ」としている。時間ばかりが過ぎて行く。

 

七吟歌仙 かなかなの巻 評釈(2)  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月11日(水)10時14分48秒

      夜毎天狗は高尾の森で        月犬

ウ  語部の塩辛声のしみわたる        令

 天狗にまつわる言い伝えを老人が語っているのだろう。令さんは「みしみし」以外に「義仲寺連句会」にも所属の連句人である。ここからあばれどころである。


   語部の塩辛声のしみわたる        令

    南の島の白き砂浜           子

 前句の「塩辛声」から南の島の景が導かれている。


    南の島の白き砂浜           子

   たつぷりと塗つてと言ひて横たはり    り

 どうとでもとれる書き方で付けているが、前句との組み合わせであれば日焼け止めクリームであろう。恋の呼び込みとなっている。


   たつぷりと塗つてと言ひて横たはり    り

    背骨をなぞるこそばゆき指       こ

 この付句との組み合わせであれば、前句はあやしげなローションであろう。


    背骨をなぞるこそばゆき指       こ

   三味線の皮は猫だと教へられ       庵

 前句を猫にすり替え、恋を終わらせている。


   三味線の皮は猫だと教へられ       庵

    蝙蝠の影よぎる月面          河

 前句に猟奇的なものを感じたのだろうか、蝙蝠により夏の月としている。


    蝙蝠の影よぎる月面          河

   書棚には伯爵領といふ句集        犬

 「蝙蝠」と来ればドラキュラ伯爵だろうが、さらにひねって高柳重信の句集『伯爵領』(昭和二七年)で付けている。


   書棚には伯爵領といふ句集        犬

    前へ倣へで靴の形に          令

 その重信の句集は多行俳句を収めたもので、靴のかたちをした次の句がある。多行俳句の一文字一文字を子どもに見立てている。


     降る雪の

     かなた

      蝋燭の

       輪の

       舞踏

        靴


    前へ倣へで靴の形に          令

   下萌を駆けてくる半ズボンたち      子

 その少年たちを走らせた。花の座が近いので春の句としている。


   下萌を駆けてくる半ズボンたち      子

    げにかぐはしき佐保姫のひだ      り

 「半ズボン」の少年たちに対し、春のフェロモンをまき散らす「佐保姫」を配合している。


    げにかぐはしき佐保姫のひだ      り

   風光るテラスヘスパゲティふたつ     こ

 本来は花の座の位置であるが、あんこさんはすでに第三で月の座を詠んでいるため、花の座を譲り別のもので付けている。「かぐはしき佐保姫のひだ」から導かれた「スパゲティ」は香草スパゲティだろうか。オーソドックスな連句では、花の座をこぼす(定位置より遅く出す)のは好ましくないのだが、かといってひとつ前は捌き人なので苦渋の選択でこぼすことにした。


   風光るテラスヘスパゲティふたつ     こ

    文庫の中也詩集に落花         庵

 前句の「スパゲティふたつ」に対し「文庫の中也詩集」で付けているということは、破局したのだろうか。「陽は温暖に降り注ぎ、風は花々揺ってゐた。」の直前は「僕は此の世の果てにゐた。」である。  

七吟歌仙 かなかなの巻 評釈(1)  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月11日(水)00時42分54秒

     かなかなや他人の住んでゐる生家    陽子

 発句は俳人の仲田陽子さんから頂いた。ある日突然フェイスブックで友だちになったが、じつは面識がない。最近連句に興味を抱いたとのことで、あちこちの座に参加しているらしい。そのくらいの予備知識でも発句をお願いしてしまうのが、なんとも「みしみし」的ではある。もともと借家だったのか人手に渡ったのかはさだかではないが、生まれ育った建物に今は他人が住んでいる、懐かしくも不思議な夕暮れを詠んでいて、「かなかなや」に詠嘆がある。


   かなかなや他人の住んでゐる生家    陽子

    釣瓶落しへ豆腐屋の笛       ゆかり

 脇は発句と同じ場所、同じ時刻を詠んで挨拶とする。そもそもネット連句であって同じ場所ではないのだし、書いたとおり予備知識もほとんどないのだが、もっともらしく付けるのもまたネット連句である。カメラを引いて夕空を捉えるとともに、発句の自然な音声情報に対し、人工的な音声情報を配した。今日、豆腐屋の巡回販売もかなり廃れているので、発句の郷愁に寄り添ったものとも言える。


    釣瓶落しへ豆腐屋の笛       ゆかり

   月光を物理学者のすり抜けて     あんこ

 第三は発句と脇の挨拶から離れ、フィクションとしての付け合いの開始点となる。発句が秋の場合、通常は五句目の月の座を第三に引き上げるのが通例で、その通りに進行している。天才物理学者がインスピレーションに取り憑かれて時空をワープしたような趣がある。あんこさんは「みしみし」常連の俳人。


   月光を物理学者のすり抜けて     あんこ

    狂ひ咲きをる病院の庭        媚庵

 前句の物理学者が発狂したかのような導入だが、はぐらかしている。前句までが秋で、雑を挟まずに冬としている。媚庵さんは「みしみし」常連の歌人にして俳人。


    狂ひ咲きをる病院の庭        媚庵

   洟水に似たる氷柱をへし折らん     銀河

 病院に来るくらいだから風邪でも引いているのだろう。氷柱のしずくが洟水に似て忌々しい。銀河さんは「みしみし」常連の俳人で、評論も手がける。


   洟水に似たる氷柱をへし折らん     銀河

    夜毎天狗は高尾の森で        月犬

 前句の「洟水」と「氷柱」から「天狗」が導かれている。高尾山は天狗信仰で名高い。月犬さんは「みしみし」常連の俳人。創刊号以来、表紙デザインを担当して頂いている。

 

おめでとうございます。  投稿者:銀河  投稿日:2019年 9月 9日(月)01時18分0秒

  松山に帰省している間に見事満尾。おめでとうございます。

みなさんお疲れさまでした。私は少し、きんちょーしました。


「引き出しのハズキルーペ」はおいてゆき、老眼鏡の方を持参いたしました。この句ですが、少し前に「押入れの中息ひそめる」があり、離れているのと、場面が違うので大丈夫では在りますが、かすかに暗い場所の雰囲気がかさなって、ちょっときになりました。あと、明るい方に転じていただきホッとしています。  

どうも  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月 6日(金)21時10分43秒

   月犬さん、紙の『みしみし』では毎号お世話になっておりますが、そっか、こちらは久しぶりだったのですね。「書棚には伯爵領といふ句集」とか「嗚呼恍惚の牡丹雪降る」とか面白かったです。「靴の形」の説明もありがとうございました。  

満尾おめでとうございます  投稿者:月犬  投稿日:2019年 9月 6日(金)16時42分26秒

  ひさしぶりのみしみし、楽しかったです。

みなさまお疲れ様でした。  

連句における読みについて  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月 6日(金)14時51分17秒

   陽子さん、ありがとうございます。


ナウ3→4

菊酒を唐草文の風呂敷に      令

 押し入れの中息をひそめる    子


押し入れに隠した間男を風呂敷で逃がす~という内容の『風呂敷』という落語から付けました。(о´∀`о)


 なるほど、作者の意図としてはそういう付け筋でしたか。連句においては、作者の意図は捌き人や付ける人によって、進むごとに塗り替えられます。作者の意図を尊重することを第一とするのではなく、こう読んだ方が面白いとか、打越と前句との関係においてこの語はこういう意味だったから、では前句と付け句の関係においては、こう読み替えてしまった方が面白いだろう、というふうに一句進むたびに句の意味が塗り変わっていくところに、決して後ろを振り返らずつねに前進する連句の精神があるのです。


    旅の役者と帰る燕と          犬

   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

 この二句の間では、唐草文の風呂敷は旅の役者の身軽な荷物です。


   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

    押し入れの中息をひそめる       子

 この二句の間では、空き巣が唐草文の風呂敷に包もうとしていたら、住人が帰ってきてしまったので押入に隠れた場面となっていて、旅の役者の意味性は捨て去られています。


    押し入れの中息をひそめる       子

   熱戦はタイブレークに突入す       り

 この二句の間では、押入の外で長々とテレビを観ているために出るに出られない状況を描いています。ここでは空き巣の意味性は失われ、むしろ間男的です。


 このように次の句との関係において前句の意味が刻々とすり替わりつつ、打越を捨てて行くのが連句における三句の渡りというものです。とはいえ、それがすべてではありません。


   熱戦はタイブレークに突入す       り

    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

 ここでは前句の意味がなにひとつ変わっていません。しかし打越の間男的な意味性を場面ごと捨て去っているので、これはこれで前進しているのです。



 

祝満尾!おめでとうございます!  投稿者:陽子  投稿日:2019年 9月 6日(金)14時05分14秒

  ゆかりさま、連衆の皆さま、満尾おめでとうございます!

初参加ということで、皆さまの足を引っ張るのでは?と緊張しましたが、ゆかりさんの捌きを体験させていただき、とっても勉強になりました。『ボーイ』の件も治してくださってありがとうございます。

楽しい道中をありがとうございました!?


ナウ3→4

菊酒を唐草文の風呂敷に      令

 押し入れの中息をひそめる    子


押し入れに隠した間男を風呂敷で逃がす~という内容の『風呂敷』という落語から付けました。(о´∀`о)  

ちょっと直します。  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月 6日(金)09時26分6秒

   陽子さんからボーイスカウトとボールボーイは障らないのかと指摘を頂きました。じゅうぶん離れているので構わないと言えば構わないのですが、片仮名なので目立つとも言えます。初折裏9句目の方を変えます。


     七吟歌仙 かなかなの巻


   かなかなや他人の住んでゐる生家    陽子

    釣瓶落しへ豆腐屋の笛       ゆかり

   月光を物理学者のすり抜けて     あんこ

    狂ひ咲きをる病院の庭        媚庵

   洟水に似たる氷柱をへし折らん     銀河

    夜毎天狗は高尾の森で        月犬

ウ  語部の塩辛声のしみわたる        令

    南の島の白き砂浜           子

   たつぷりと塗つてと言ひて横たはり    り

    背骨をなぞるこそばゆき指       こ

   三味線の皮は猫だと教へられ       庵

    蝙蝠の影よぎる月面          河

   書棚には伯爵領といふ句集        犬

    前へ倣へで靴の形に          令

   下萌を駆けてくる半ズボンたち      子

    げにかぐはしき佐保姫のひだ      り

   風光るテラスヘスパゲティふたつ     こ

    文庫の中也詩集に落花         庵

ナオ 早紅葉の湯田温泉の駅舎裏        河

    旅の役者と帰る燕と          犬

   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

    押し入れの中息をひそめる       子

   熱戦はタイブレークに突入す       り

    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

   賭け金をまた倍にする女連れ       庵

    燃える朱色に香を焚きしめ       河

   老画伯襖に描く龍虎の図         犬

    竹林のなか小径小暗し         令

   月光に関守石のひとつあり        子

    抜き差しならぬままに長き夜      り

ナウ 露霜の鉄扉を押せば軋みたる       こ

    グランドピアノ弾く人の影       庵

   抽斗にハズキルーペを置き忘れ      河

    嗚呼恍惚の牡丹雪降る         犬

   雨傘をレフ板として花万朶        令

    整列の前よぎるてふてふ        子


起首:2019年 8月13日(火)

満尾:2019年 9月 5日(木)

捌き:ゆかり

 

かなかなの巻 満尾  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月 5日(木)20時56分20秒

   陽子さん、ありがとうございます。


一句目…めでたいだけのような気がします。

二句目…花の座の次に「桜鯛」はないような気がします。

三句目…いいんだけど、ちょっと硬い気もします。

四句目…めでたいんだけど、紅白の幕が挙句というのも…。


という訳で、三句目をひらがなを増やして頂くことにします。


     七吟歌仙 かなかなの巻


   かなかなや他人の住んでゐる生家    陽子

    釣瓶落しへ豆腐屋の笛       ゆかり

   月光を物理学者のすり抜けて     あんこ

    狂ひ咲きをる病院の庭        媚庵

   洟水に似たる氷柱をへし折らん     銀河

    夜毎天狗は高尾の森で        月犬

ウ  語部の塩辛声のしみわたる        令

    南の島の白き砂浜           子

   たつぷりと塗つてと言ひて横たはり    り

    背骨をなぞるこそばゆき指       こ

   三味線の皮は猫だと教へられ       庵

    蝙蝠の影よぎる月面          河

   書棚には伯爵領といふ句集        犬

    前へ倣へで靴の形に          令

   下萌をボーイスカウト駆けてくる     子

    げにかぐはしき佐保姫のひだ      り

   風光るテラスヘスパゲティふたつ     こ

    文庫の中也詩集に落花         庵

ナオ 早紅葉の湯田温泉の駅舎裏        河

    旅の役者と帰る燕と          犬

   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

    押し入れの中息をひそめる       子

   熱戦はタイブレークに突入す       り

    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

   賭け金をまた倍にする女連れ       庵

    燃える朱色に香を焚きしめ       河

   老画伯襖に描く龍虎の図         犬

    竹林のなか小径小暗し         令

   月光に関守石のひとつあり        子

    抜き差しならぬままに長き夜      り

ナウ 露霜の鉄扉を押せば軋みたる       こ

    グランドピアノ弾く人の影       庵

   抽斗にハズキルーペを置き忘れ      河

    嗚呼恍惚の牡丹雪降る         犬

   雨傘をレフ板として花万朶        令

    整列の前よぎるてふてふ        子


起首:2019年 8月13日(火)

満尾:2019年 9月 5日(木)

捌き:ゆかり


 これにて満尾とします。連衆の皆様、ありがとうございました。しばしご歓談下さい。多少の差替応じます。

 

(無題)  投稿者:陽子  投稿日:2019年 9月 5日(木)17時45分58秒

  嗚呼恍惚の牡丹雪降る      犬

 雨傘をレフ板として花万朶   令


囀のもと満面の笑み

八十寿に桜鯛の尾頭

整列の前蝶々横切る

入学式の幕のふくらみ


春のおめでたい句ということで・・・

いかがでしょうか?  

花  投稿者:れい  投稿日:2019年 9月 5日(木)10時04分54秒

  わっ、すごい変身。

いい句ですね。

私にはレフ板なんて思いつきません。

 

かなかな ナウ花  投稿者:ゆかり  投稿日:2019年 9月 4日(水)11時23分53秒

   令さん、ありがとうございます。二句目を頂きたいのですが、「写真家」は「撮り」に行くものでしょうなどと思い出したら、わざわざ「写真家」と言わなくたって写真家っぽくできるでしょうなどと思い始め、前句「牡丹雪」を踏まえると「傘」は生かしたいななどと思っているうちに、原句とずいぶん変わってしまいました。こんなに変えちゃっていいのかな(^^);


   かなかなや他人の住んでゐる生家    陽子

    釣瓶落しへ豆腐屋の笛       ゆかり

   月光を物理学者のすり抜けて     あんこ

    狂ひ咲きをる病院の庭        媚庵

   洟水に似たる氷柱をへし折らん     銀河

    夜毎天狗は高尾の森で        月犬

ウ  語部の塩辛声のしみわたる        令

    南の島の白き砂浜           子

   たつぷりと塗つてと言ひて横たはり    り

    背骨をなぞるこそばゆき指       こ

   三味線の皮は猫だと教へられ       庵

    蝙蝠の影よぎる月面          河

   書棚には伯爵領といふ句集        犬

    前へ倣へで靴の形に          令

   下萌をボーイスカウト駆けてくる     子

    げにかぐはしき佐保姫のひだ      り

   風光るテラスヘスパゲティふたつ     こ

    文庫の中也詩集に落花         庵

ナオ 早紅葉の湯田温泉の駅舎裏        河

    旅の役者と帰る燕と          犬

   菊酒を唐草文の風呂敷に         令

    押し入れの中息をひそめる       子

   熱戦はタイブレークに突入す       り

    ボールボーイのいつも後ろ手      こ

   賭け金をまた倍にする女連れ       庵

    燃える朱色に香を焚きしめ       河

   老画伯襖に描く龍虎の図         犬

    竹林のなか小径小暗し         令

   月光に関守石のひとつあり        子

    抜き差しならぬままに長き夜      り

ナウ 露霜の鉄扉を押せば軋みたる       こ

    グランドピアノ弾く人の影       庵

   抽斗にハズキルーペを置き忘れ      河

    嗚呼恍惚の牡丹雪降る         犬

   雨傘をレフ板として花万朶        令


 陽子さん、挙句考えてて下さい。春のおめでたい句です。


 

かなかな  投稿者:れい  投稿日:2019年 9月 4日(水)10時28分23秒

     昼夜帯締めてこの日をいざ花見      令

   傘さして写真家はゆく花撮りに


お捌きください。  


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